□中期財政改革基本方針骨子について


(佐々木県議)

 本県では構造的収支不足に対応すべく、14年12月に10年間に500人の職員定数
の削減や給与カット等の人件費総額の抑制、公共事業等の減額などを内容とする「財政健全化指針」を策定し、さらに昨年10月には、一般施策経費の40%削減等の追加策を加え18年度までに100億円の収支改善を行うという、非常に厳しい内容でありましたが、財政再建の一応の見通しをつけたところでした。

 しかし、昨年末のいわゆる地財ショックにより、構造的収支不足は16年度当初予算での圧縮努力にもかかわらず450億円程度に拡大し、このままでは18年度にも財政再建団体に転落する危機的な状況となりました。財政再建団体になれば、国の管理の下、収支均衡に向けて歳入歳出の厳しい見直しが求められ、県民負担の増加や本県経済へ甚大な影響が見込まれ、なんとしても避けねばなりません。このため財政健全化指針に替わる「中期財政改革基本方針」の骨子を5月末に策定されたところであります。

 この骨子では16から18年度にかけて、収支不足450億円のうち、先ず300億円程度を削減し、財政再建団体への転落を回避する。また起債制限比率を起債発行の制約が掛かる20%以上としない。この2点を目標とされています。300億円の内訳は給与費カット率の引き上げ、定員削減の前倒し等行政の効率化・スリム化により100億円、事業の見直し・縮減により200億削減するというものであります。

 このうち事業の見直し等による一般財源200億の削減でありますが、この数字は15,16年度と大幅削減した各種事業費をさらに半減させなければ達成できないという大変な数字であります。しかし財政再建団体への転落を回避するためには、必ずやり遂げなければならない数字でもあります。

 そこで伺います。この改革を行えば県民の皆さんや県経済への影響は非常に大きいと推測されますが、この改革を進めるには、現在の財政状況と事業の順位付けの手法等を含めた財政再建計画を県民の皆さんに周知撤低し、御理解を得ることが不可欠であります。県のホ−ムペ−ジに載せて、そこでの意見募集を行う程度で終わるような話ではないはずであります。私は、ある場面では知事が先頭に立ち県民に説明に歩くぐらいのことは必要ではないかと思っております。県民理解を得るためにどのような方法をお考えなのか伺います。                                  

(澄田知事)

  まず、中期財政改革基本方針骨子に関する県民理解を得るための方法についてであります。
   この度の改革は、本県がこれまで経験したことのない大きな取り組みであり、今後、県行政の守備範囲や行政サ−ビスのあり方、さらには、仕事のやり方など、県行政のあり方を抜本的に変革していくことになります。このことは、県民の皆様に我慢を強いることになりますが、なんとしてもやり遂げなければなりません。

 そのためには、県民の皆様に対して、現在の厳しい財政状況を認識していただくとともに、改革の内容について十分御理解いただくよう、ありとあらゆる広報媒体を活用するとともに、直接県民の皆様とお会いし、説明していくことが何よりも重要であると考えています。提案理由の中でも、「死にものぐるいでやり遂げることこそが、私に課せられた指命であり、責務である」と申し上げましたが、私を始め、幹部が率先して地域に出かけ、県民の皆様の理解を求めていく所存です。

 次に、今後の財政改革における事業の取捨選択、優先順位付けについてであります。
  財政再建団体への転落を回避するためには、大幅な歳出の削減、そのための施策・事業の抜本的な見直しが不可欠であります。

 その視点は大きく分けて二つあります。一点目は県として必ずやらなければならない事業の見極めであり、特に県が引き続き行うべきものなどは、他の施策を徹低的に見直すことにより所要財源の確保を図る必要があります。

 二点目は、本県の将来のために県としてやるべき事業の見極めであり、優先度の高い分野については、集中的に事業を実施していく考えです。

 今後、こうした二つの視点を基本にしながら、総合計画における施策の優先順位付けなどを踏まえ、「中期財政改革基本方針」を策定し、具体的な事業の見直し・縮減等を行ってまいります。




(佐々木県議)

  3点目は本県の行ってきた社会資本整備についてであります。

 このような大きな構造的収支不足が生じた原因としては、地方財政計画の見直し、景気低迷による県税収入の減、とともに公債費の増高が上げられていますが、この公債費の増高は言うまでもなく、過去に、遅れていた本県の社会資本整備を進めるために公共事業等を積極的に行ってきた結果であります。

 なるほど公債費および、県債残高は高い水準にありますが、公共事業に積極的に取り組み、その結果、社会資本整備が進んだことも事実であり、このことは評価しなくてはいけないと考えます。例えば県道の幹線道路の改良率では、新世紀道路ネットワ−ク整備事業が始める前の平成2年に42%であったものが、平成15年には77%と整備が進み、住民の利便性は確実に向上しています。都市には地方は無駄な公共事業を行っている旨の論調も見受けられますが、私は本県は定住、産業振興などの基盤であります社会資本整備を必死に取り組んできたものと思っています。

 知事は今まで取り組んでこられた社会資本整備について、現在どうお考えなのか、改めて伺います。                               

 なお、18年までに、非常に厳しいこの300億円に上る収支改善の改革を行った後も、現在の見通しから言えば、未だ構造的収支不足150億円が積み残しであり、又警察、教職員を含む職員の給与がカットされたままの状態も残っております。三位一体の改革の行方、国・地方のあり方等、今後不透明な要素も多々ありますが、いずれ解決しなければならない問題があります。基本方針は、10年後の収支均衡を視野に平成16年度から18年までの3ヶ年の取り組みを定めるとされておりますが、これらの問題もできるだけ早くその筋道、方向性を打ち出されることを要望します。

 また、「中期財政改革基本方針」の具体的中身については、今後、来年度予算編成方針に向け具体化されるのでありますが、私は先程、0ベ−スで再構築と表現しましたが、従来の予算と来年度予算はその意味合いが全く違うと考えます。

 去る5月には今後の県政推進の基本方針である「島根県総合計画」基本構想編が策定されたところであります。総合計画で示された本県の目指すべき将来像『自立的に発展できる快適で活力ある島根』の実現と、非常に限られた財源。これを両立するためには、従来の予算編成方針を180度変えなけねばなりません。来年度は言うならば今後の本県財政の元年とでも言うべきものであると考えます。今後「中期財政改革基本方針」の肉付けの具体的作業に入り、秋には編成方針を打ち出されるのでありますが、新しい発想で厳しい中にも総合計画の目指す方向性が着実に見えるものとして戴くよう希望し、この質問を終わります。

(澄田知事)

  次に、社会資本の整備についてであります。

 本県にとりまして、立ち遅れていた社会資本の整備は、活力に満ちた産業の振興や県民生活の安全・安心の向上を図る上で、早急に取り組まなければならない重要な課題でありました。
  私は、特に我が国の社会経済情勢が減速に転じると予測されていた今世紀初頭までの期間を最後の基盤整備の時期と位置づけて、社会資本整備に最大限の力を注ぎ、積極的に取り組んでまいりました。

その結果、空港や高速道路をはじめとした高速交通網、高度情報通信網、下水道の整備など本県の社会資本の整備水準は相当程度向上し、島根の自立的な発展に向けた基本固めができたと考えております。

今後は、こうしたこれまでの成果を最大限に活かしたソフト事業を展開しつつ、極めて厳しい財政状況の中ではありますが、「自立的に発展できる快適で活力のある島根」の実現に必要不可欠な社会資本の整備を戦略的に進めてまいりたいと考えております。




             □ トキの分散飼 □

(佐々木県議)

  出雲市
は、中華人民共和国漢中市との間で平成3年に友好関係を締結し、以来技術研修生の受け入れや文化、スポ−ツ交流等幅広い交流を行っております。
また、漢中市には、中国国内のトキ保護を行っております洋県トキ保護センタ−があることから、平成11年からは友好交流の一環として、出雲市民が同センタ−のトキの里親となるなど、トキの保護に関わる活動を官民一体となって取り組んでおり、漢中市や中国政府から高い評価を受けております。

 一方、これまで日本国内でのトキの保護増殖は新潟県の佐渡トキ保護センタ−のみで行うこととされていましたが、本年1月に国より示された「トキ保護増殖事業計画」では、種の安定的存続を目指し佐渡島以外の地域での飼育、いわゆる分散飼育が進められることとなりました。この国の方針を踏まえ出雲市ではかねてから、市民より強い要望が有った出雲市でのトキの飼育に取り組む事とされ、先般、国に対し分散飼育地とされるよう要望されたところであります。

 また、併せて県に対しても誘致に対する支援が要請されましたが、早速、知事自ら国に対し誘致を働きかける等、積極的に取り組んで頂いたところであります。トキを飼育繁殖することは、単に絶滅が危惧される種の繁殖だけでなく、国を越えた自然環境の大切さを考える環境教育はもとより、かつてトキが数多く生息していた島根の豊かな自然をアピ−ル出来る絶好の機会となると考えております。

 しかしながら、トキの分散飼育については、出雲市以外に石川県が積極的に検討を行っていると聞いております。また、複数の動物園が候補として挙げられているとの情報もあります。このような状況の中、出雲市が分散飼育地とされるためには、誘致に向けた県の取り組みが必要であると考えております。

 出雲市へのトキ分散飼育についての知事のお考えを伺います。
         

(澄田知事)

   次に、出雲市へのトキの分散飼育についてであります。

 出雲市は長年にわたる中国漢中市との交流の一環として、中国でのトキ保護に官民あげて取り組むとともに、国際交流や環境教育の観点から、漢中市からのトキの借り受けを要望されていたことは、私もかねてから承知しておりました。

 しかしながら、中国政府がトキの貸し出しは国家間で行うとされたことや、この度、環境省が国内でのトキ分散飼育の方針を示したことを受け、出雲市は分散飼育地としてトキの誘致を要望することとされました。私もこのような取り組みは、大変有意義なものと考え、先月、小池環境大臣にお会いし、出雲市とともに要請を行いました。

 この要望を実現するためには、トキの飼育に適した土地の選定や、飼育スタッフの確保等の課題を解決する必要があると伺っております。

  県としましては、出雲市のこれらの課題解決に向けた取り組みを支援するとともに、出雲市がトキの飼育地として選定されるよう、機会を捉えて国に働きかけて参ります。




                  抗がん剤治療について□

(佐々木県議)
  昨年9月出雲市在住の佐藤氏から県議会に対して、「抗がん剤治療専門医の早期育成について国や大学に対して働けかけること」、「世界の標準的な治療が日本で受けられるように抗がん剤の承認及び保険適応の拡大をもとめること」を趣旨とする請願書が、県民26,075人の署名と合わせて県議会議長に提出されました。議会のご理解により、厚生労働大臣、文部科学大臣等に対して意見書を提出したところであります。

 佐藤氏が全国の「癌と共に生きる会」の代表になったこともあり、私自身も、「癌と共に生きる会」会長の同氏やその他の患者団体とともに本年1月には厚生労働大臣に、また5月には文部科学大臣に直接要望書を手渡すなど全国的な取り組みに参加しているところであります。これらの活動に参加する患者さんたちの「叫び」にも近い声を聞くたびに、一刻も早い課題解決が重要であるとあらためて気持ちを引き締めているところであります。

 ご存じのように、国におけても、我が県においても1980年代から、「がん」は死因別死亡のトップであり、「がん」の予防と治療に関しては、国家的な取り組みがなされております。その結果、不治の病といわれていた「がん」も、早期発見や効果的な治療が可能になってきております。

 しかしながら、「がん」治療中の多くの患者さんにとって、抗がん剤による治療(薬物治療)は、厳しい副作用があり、患者の生活の質を著しく低下させているという現実があります。その一方、抗がん剤に精通した専門医による治療を受け、副作用も少なく発病前とほぼ同様の日常生活、社会活動を営める患者さんがおられることも事実であると聞いております。このことからも、抗がん剤の適切なコントロ−ルによって、副作用を極力押さえながらも最大限の効果を導き出す知識・技術を有する専門医の養成は極めて重要であります。

 また、抗がん剤治療に標準的に用いる薬剤についても、日本では一部の薬剤が未承認で使えなかったり、また承認されていても保険で使えない薬剤があるため、高額な治療費が必要になるといった状況があります。こうした中にあって、執行部におかれても、このことを熱心に取り組んでいただいていることを高く評価しております。

  そこで、まず昨年度以降の執行部としての取り組み状況について伺います。またそれらの取り組みを通じ国等の動向をどのように把握しておられるか伺います。                             

(健康福祉部長)

  先ず抗がん剤治療にかかる県の取り組みについてお答えします。

 昨年九月議会で請願が採択された直後に、国に対して、『抗がん剤治療を専門とする医師の養成』、『がん治療に係る新薬の速やかな承認とこれにともなう保険適用の拡大』について要望を行ったところであります。さらに、先の重点要望においても、重ねて要望を行ってまいりました。
  また、島根大学医学部に対しては、『がん診療体制の充実』と『抗がん剤治療を専門とする医師の養成』について、数回にわたり要望を行い、ご承知のように本年四月から医学部付属病院に腫瘍科の設置が実現したところであります。

 次に国等の動向についてであります。

 国においても、患者団体や本県からの要望を受け、薬剤承認審査過程の簡素化や、製薬会社からの薬剤の承認申請を促進する取り組みが始まっております。

 一方、抗がん剤治療に関する代表的な学会である日本臨床腫瘍学会では、すでに専門医制度が作られ、平成十九年から認定を開始する予定です。厚生労働省においては、これらの動きを支援するために、今年度から、第三次対がん総合戦略研究事業の一環として、専門医を育成するための研究を進めると聞いております。




(佐々木県議)
  さらに、抗がん剤治療の充実は全国的な課題であり、我が県だけの取り組みでなく、厚生労働省や文部科学省等の関係機関が連携して課題解決に取り組んでいく必要があると考えております。そうした中、宮隅議長のご尽力により、中国地方議長会の場でもこのことを取り上げていただき、論議がなされるなど全国的な広がりが出てきていると実感しているところであります。執行部としても、中国地方知事会の場を通じ、その取り組みを広げていく必要があるのではないかと考えるが、このことについての意見を伺う。

(澄田知事)

 抗がん剤治療についてお答えします。

 本県でも、がんは総死亡数の約三割を占めており、がん患者の皆さんが、安心して治療を受けられるよう、適切な医療提供体制を整備することは、極めて重要であると認識しております。がん治療には、手術、放射線治療、抗がん剤治療などがあり、がんの進行状況など患者の状態によっては、抗がん剤治療がより効果を発揮する場合があります。

 しかしながら、我が国における抗がん剤治療は、欧米に比べ、抗がん剤の承認や、抗がん剤治療を専門とする医師の育成が遅れている状況があります。

 議員ご指摘のように、抗がん剤治療にかかるこのような課題は本県だけでなく、関係団体等と連携を図りつつ、国に対して働きかけていくことが必要であります。

 このため、県としましては、このような問題を、中国地方知事会に提案するとともに、今後さまざまな機会を通じ、国に対して要望を行いたいと考えております。また、県内の地域がん拠点病院の医師の国立がんセンタ−における派遣研修を支援するなど、専門医の養成に取り組んで参りたいと考えております。

                










   

平成16年6月定例県議会(一般質問)