1.栽培編
   ●柿の原産地はどこ? 
 柿の原産地は中国の長江(揚子江)流域だと言われています。奈良時代頃に日本へ入ってきたようで、平安時代に編纂された「延喜式」(927年)にも干し柿や熟柿(じゅくし)についての記述が見られます。 
 最初は渋柿だけでしたが鎌倉時代には甘柿が出現し、日本各地で様々な品種が生まれました。江戸末期に来日したペリー艦隊がアメリカへ持ち帰り、そこからヨーロッパへ、また、日本からの移民の手により南米へと広がっていきました。 
現在は、英語でも柿の実は「KAKI」と呼ばれています。 
   ●柿の品種はいくつあるの? 
 柿の種類は大きく次の三つに分けられます。 
完全甘ガキ タネの有無に関係なく渋が抜けて甘くなる品種。富有、伊豆など。 
不完全甘ガキ 柿の実の中にタネが出来ると、渋が抜けて甘くなる品種。タネの入りが悪いと渋が残ってしまいます。西村早生など。 
完全渋ガキ 何らかの方法で渋抜きをしないと食べられない品種。西条、刀根早生、平核無(ひらたねなし)など。 
 明治45年に当時の農事試験場(国の研究機関)が品種の調査を行っていますが、それによれば全国から集められた柿は3,000種類以上、そのうち品種として認められたものが937品種あったとされています。その後、育成された品種もありますので、ゆうに1,000品種以上はあるでしょう。 
   ●柿の産地はどこ? 
 全国的に見ると暖かいところでは甘柿が、寒いところでは渋柿が多く作られています。平成14年産果樹生産出荷統計(平成14年3月、農林水産省統計情報部編)によれば、栽培面積で見ると柿の産地は次のとおりです。 
  第1位 和歌山県 第2位 福岡県  第3位 奈良県 
 ちなみに島根県は第12位です。なお、柿の経済栽培の北限は山形県〜宮城県です。東北地方北部以北、特に北海道では寒さのため栽培されていません。  
   ●柿はどうやって作るの? 
 柿の苗は接ぎ木をして作ります。 
 昔話の「さるかに合戦」では、カニがおにぎりと交換した柿のタネを播くと、芽を出した柿が大きくなって実をつけます。サルが木に登ってその実を独り占めして食べてしまいます。 
 ところが実際には、タネから大きくなった苗(「実生(みしょう)苗」と言います)は、99.9%以上は渋ガキとなります。サルは食べた柿が渋かったので怒って柿の実を投げつけたのかもしれませんね。また、果実の形や大きさもどんなものが出てくるかわかりません。 
 そこで農家では、タネを播いて作った実生苗に栽培種(西条や富有など)の穂木を接ぎ木した苗を畑に植えます。「桃栗三年、柿八年」と言われますが、上手に育てると3年目ぐらいから実をつけ始めます。 
 年間の主な管理作業には次のようなものがあります。 

【せん定】:12〜2月 
  無駄な枝を切り落として、樹全体に良く陽が当たるような樹の形をつくります。 

【粗皮けずり】:1〜2月 
 樹の皮の下に隠れている害虫を退治するために、樹の表面のいらなくなった皮を高圧の水をかけて剥いでやります。 

【摘蕾(てきらい)】:5月 
 柿の花は5月下旬に咲きます。「えっ!柿に花が咲くの?」と言われるかもしれませんが、花が咲かないと柿の実はできません。春に芽吹いた枝(「新梢(しんしょう)」と言います)を見ると、葉の付け根の部分に小さな蕾(つぼみ)がついているのがわかります。 
 1本の柿の樹にたくさんの蕾がつきますが、その数を減らしてやらないと大きな美味しい柿の実にはなりません。この蕾を落とす作業を摘蕾と言います。農家では2週間ほどの間にこの作業を行いますが、栽培の多い農家は、何十万個もの蕾を落とすことになりますので、大変忙しくなります。 

【授粉】:5月 
 柿の花には雄花(おばな)と雌花(めばな)があります。大部分の栽培品種は雌花しかつけません。そのため雄花をつける品種を柿園の中に植えておき交配する必要があります。交配しないとタネが入らないのです。食べる方からすれば「タネが無い方が食べやすいよ」と言われるかもしれませんが、タネが入っていない柿の実は途中で落ちてしまいます。タネが入っていないと「大きな美味しい柿」は出来ないのです。 
 以前は、人間がこの交配作業をやっていました。絵筆に花粉をつけて、柿の花につけてやるのです。この作業も根気がいる大変な作業でしたが、最近はミツバチの力を借りてやっています。 

【摘果(てきか)】:6〜7月 
 花が咲き終わるとだんだん柿の実が大きくなってきます。まだまだ沢山の柿の実がついていますが、この段階で傷のついたものや形の悪いものを落としてやります。この作業を摘果作業と言います。ここで更に数を減らすことで大きな柿の実になります。 

【病害虫防除】:3〜9月 
 柿にも様々な病害虫が発生します。毎年安定した生産をするためには、これらの病害虫防除のために必要最低限の農薬散布を行います。柿部会ではより「安全で安心」な柿をお客様に届けるため、フェロモン剤の利用や耕種的防除(栽培管理の工夫で病害虫を抑える防除法)の導入など、今後も減農薬の取り組みを進めます。 

【その他】:年間 
 園内の草刈り、施肥、好天時の水やり、大雨時の排水対策、台風時などの枝つり(風で枝が折れないようにヒモで結ぶ)など、いろいろな作業があります。 

【収穫】:9〜11月 
 生産者の1年間の苦労が結果となって表れます。平田では西村早生、伊豆、西条、松本早生富有、富有の順番で収穫していきます。 
 収穫作業は簡単そうに見えますが、柿の実に傷がつかないよう慎重に取り扱う必要があります。 
 収穫した柿の実は共同選果場に運ばれ、等階級別に選別・箱詰めされて出荷されます。西条は渋柿ですのでドライアイスと一緒にビニール袋に入れて箱詰めされます。そうすると市場へ着くころには渋が抜けて甘くて美味しい柿となります。 

2.食べる編
   ●甘柿と渋柿の違いは? 
 まだ柿の実が小さいうちは、全ての柿で渋があります。ところが甘柿の場合は、果実が大きくなるにつれてタネが育ったり渋が変化したりして、食べたときに渋を感じなくなります。これに対して渋柿は、収穫期になっても渋が残り、そのまま食べると渋くて「べえ〜(>_<)」となってしまいます。 
   ●タネはいくつあるの? 
 柿の実の場合、完全に授粉してタネが入ると8個のタネが入ります。実際にはそこまで数多くのタネが入ることは稀です。食べる分にはタネが無い方が食べやすいのでしょうが、栽培する方から見るとタネが入ることで、生理落果(柿の実が大きくなる前に落ちてしまう現象)を起こしにくくなっったり、大きくなるなど良い面があります。 
 ただ、品種によっては「平核無(ひらたねなし)」のようにタネが途中で退化して無くなってしまうものもあります。 
   ●渋を抜く方法は? 
 渋抜きにはいくつかの方法がありますが、柿の品種によって渋の量が違うため、渋抜きにかかる時間も品種によって違います。 
 昔から行われているのは、「湯抜き」です。40℃ぐらいのお湯(実際には風呂の残り湯などを使っていたようです)に半日〜1日程度つけておくと渋が抜けます。ただし、色がさめたり表面が傷むなど外観が悪くなること、味がやや水っぽくなることなどから、自家用の場合に限られます。 
 「アルコール脱渋」という方法もあります。焼酎をヘタの部分に塗ってからビニール袋に入れ(あるいは布や新聞紙に焼酎を含ませて一緒に入れる)、中の空気を追い出すようにしてビニールの口を縛ります。そのまま4〜5日置いておくと渋が抜けます。アルコールの風味が出て美味しくなります(酒が好きな人のコメント!)。 
 市場に流通する柿で最も一般的な渋抜きの方法は、「炭酸ガス脱渋」です。大きな産地では脱渋室の中にコンテナに入れた柿を入れ、炭酸ガスを注入します。そのまま1日ほど置いてから脱渋室から出し、2〜3日ほど置いておくと渋が抜けます。平田の西条柿の場合は、柿とドライアイスを一緒にビニール袋に入れ、そのまま箱詰めする方法をとっています。 
   ●柿を食べると二日酔いが直るってホント? 
 昔から「柿が赤くなれば医者が青くなる」と言われています。殺菌作用やタンパク質凝固作用があるため、下痢止め、便秘の解消といった整腸作用、血止め、しもやけ、やけど、解熱や風邪の薬として用いていたようです。 
 また、ビタミンCが多く含まれていること、利尿作用があることなどから、二日酔い防止になると言われています。そうは言っても飲み過ぎればやっぱり二日酔い? 
   ●あんぽ柿って何?
 一般的には「干し柿」ですが、その作り方によって呼び名が違います。 
あんぽ柿 
 水分を生果の半分程度になるまで干したものがあんぽ柿です。外側は乾いていますが、中身はまだ水分があって柔らかく、甘味が強い干し柿です。平田では西条柿を材料にこのあんぽ柿を作っています。 
枯露(ころ)柿 
 水分が生果の20%ぐらいになるまで乾燥させたもので、表面に露がついたように白い粉がふいています。昔から栄養のある保存食として使われてきました。島根県内では東出雲町の畑地区で作られる干し柿が有名です。