権利条約を子どもに親に知らせる

〜子どもが知らない子どもの権利条約にならないために〜





1,権利条約の授業を通して子どもに知らせる
(1)対象学年 4年生(女5人、男3人 計8人)
(2)指導計画 (計4時間)
             目       標
第1次 … 権利条約の内容について知る。(2時間)
第2次 … 自分たちの生活の中で保証されていない権利について考える。(1時間)
第3次 … 保証されていない権利をどうするか考える。(1時間)
(3)指導案
第1次 「権利条約の内容について知る」
     学 習 活 動   指導上の留意点
1、子どもの権利条約について話をする。


2、「子どもの権利条約を知っていますか」の冊子を
  読み合わせる。(別所小学校作)


3、一番気に入った条項を選ぶ。


4、授業の感想を書く。
・世界の人々の間の条約であること、権利について説
  明する。

・分からないところはくわしく説明しながら進める。

・なぜ、それが気にいったのか理由も考える

・ベスト3をつけてみる。

・できれば各条項項目について感想を書くようにする。
  ☆授業の反省と子どもたちの反応
・条約の出来上がるまでの前文は感動的に捉えることができた。
・冊子を全部読むのに1時間以上かかり、読み終わるのがやっとで深く考える 時間がない。
・条約の内容に4年生には難しい部分が多く今一つ焦点がぼやけた感じがあっ た。発達段階を考えた知らせ方が必要。
・途上国、戦争、少数民族、問題を持つ家庭、麻薬、性犯罪などなど比較的自 分たちとは離れた問題が多く、自分たちの問題として捉えることができなかった。

  ベスト3に選んだ条項
 2条…4人
21条…4人
23条…2人
25,32,39,41,24,19,16,6,37,15条(1人)
2条 ・みんなちがうのはあたり前なのにさべつするなんておかしい
21条 ・お母さんやお父さんのいない子がかわいそうでその子のためにが
んばっているから
・すばらしいと思ったから
23条 障害を持つ子に対しやさしい心をもっているからいいと思う。
  授業後の感想
・子どもにもちゃんとしたけんりがあるとしってよかった。
・子どもがしごとをするなんてしんじられないです。
・たぶんこの「きまり」ができなかったらこの本もできなかったと思います。
・いろんなじょうやくがあってかなりめぐまれない人がいるなあと思いまし た。
・だい2じょうのお母さんとお父さんがいない子ということについて書いて あったけどよくテレビでおやをさがしていますということをやっているけ どそういうのだなと思いました。
・いろいろなことをしている人がいることがわかった。


第2次「自分たちの生活の中で保障されていない権利について考える」
     学 習 活 動 指導上の留意点
1、条約で守られているもの、守られていないと
 思うもの、守られたり守られなかったりしてい
 るものに分ける。
2、守られていない事例を具体的に話し合う。
3、今日の授業の感想を書く。
・ベン図に入れて考える
・なぜ守られていないの
かも併せて考えてみる
ようにする。
  ☆授業の反省と子どもたちの反応
・内容を振り分けるのは中味の理解が困難なため子どもにとっては難しい作業 であった。
・兄弟関係についての不満が多く出た。
  「お母さんがお姉ちゃんの味方にばかりなる。」「お姉さんだから…」
  「好きで妹になったわけじゃない!」「テレビがいつもお姉ちゃんの好きな番組ばかり」
・上級生の問題も出た。
  「○○君は年上だからっていばってばかり」
・男女の名簿順について話題を提供したらその不公平さについての意見が多くでた。
 しかし、「あいうえお順になっても生まれ順になっても私はいつも最後になる。」という声もあった。
・守られている条約がほとんどであった。
・年下はお下がりばかりでという意見があった。経済的事情もありしょうがない部分もあると思うが子どもが納得できるような話があったのかどうかが疑 問である。

  守られていない、守られたり守られていない条項
・12条…3人 お母さんに忙しい時は聞いてもらえない。姉が聞いてくれない。
・ 2条…2人 今までにそんなことがあったような気がする。
・16条…1人 給食の席のことで友達に心を傷つけられたことがある。

  授業後の感想
・いろいろなことを言えてすっきりした。
・わたしのけんかはたいしたことはないと思った。子どもにも権利があるとは はじめて知った。
・年上だからと言って、年下だからと言って差別してほしくないことを言えてすっきりした。
・もんくがたくさん言えてうれしかった。お姉さんになりたいと思った。
・子どもにも権利があることを知った。


第3次「保障されていない権利をどうするか考える」
学 習 活 動 指導上の留意点
1、守られていない権利を出し合う。
2、子どもの権利条約を守っていくにはどのように
  したらよいか考えてみる
・ベン図を掲示する。
  ☆授業の反省と子どもたちの反応
・守られていない権利というのが個人的なものであったので話し合いがしにく いと思い、守られていない条約について話し合うのではなく広く権利条約に ついて考えるようにした。
・4年生という発達段階もあると思うが、条約の内容が世界的なこともあって子どもたちにとってはあまりにも大きすぎる問題という捉え方になってしまい具体的にどのような行動を取れるのかについては考えにくかった。
・多くの子が共通して守られていないこ12条について絞って話し合いをして もよかったのではないだろうか。

  子どもの考え
・世界中に本を見てもらう   ・本をよんでもらう   ・人々にこれをすすめる



2,親に知らせる


 (1)学級懇談会にて
   懇談会の時に権利条約について冊子を使い説明をした。はじめて権利条約を知ったという方ばかりであった。授業で出た子どもたちの声を紹介し、「家で子どもたちがこんなことを思っているのか」「でも、絶対に許せない時 はある程度体罰も必要だ。ただ怒った後のフォローが大切だ。」「子どもが 家
で子どもも守られているんだね、と話してくれた。」という意見などが出 た。

 (2)学級通信にて
   学級通信で子どもたちの声を載せたものを紹介した。今後、特集などを組み、さらに積極的に条約について紹介していきたい。


子どもの権利条約を生かす上での問題点

 1,教師の子ども観の転換の難しさ(教師間での考えの違い)
   子どもの権利条約の精神は子どもの目線で子どもとつき合っていくことにある と考えるが、教師には子どもは指導するもの、教えるものという考え が根強く残っているのではないだろうか。特にそれは生徒指導という校務と大きく関連性 がある。生徒指導は校則からはじまり、教育相談、問題行動  の解決に至るまで 幅広く子どもの生活と共にあり、校務分掌でも生徒指導主任というのは学校をリードしていく上で子ども、教師に多大な影響力を持  っている。生徒指導はいろいろな顔があり、ある場面では共感的理解をしながらも校則でこどもを拘束している面も持ってはいないだろうか。校則を始  めとして子どもと共に考えていこうという姿勢を大切にした新たな生徒指導の在り方を構築していく必要があると思う。

 2,時間が少ない。
   ○子どもの声に耳を傾けるゆとりがない、話し合いの時間がない
   ・40人学級  
   ・教える量の多さ、難しさ  
   ・校務、行事の多さ

 3、権利条約の研修、学習の機会が少ない。

・学校の教員は教育委員会主催の研修会等で権利条約を扱ったものがなく自主 的に学んでいく以外に方法がない現実。
・条文だけでは難しいので子どもたちにわかるような形での広報が特に必要で ある。(子どもが知らない子どもの権利条約にならないように)

 4、子どもの権利意識を育てていく(子どもの意見表明・参加の積極的保障)

・権利の学習、権利行使の方法を教えていかなければただの意見表明だけに終わってしまう。また、そのような中途半端さでは他の大人から見れば子どもの言動はわがままとしてしか映らないのではないだろうか?そのためにも指導者が子どもに権利の学習を進め、また権利行使の方法を小学校の時点から教え支援していかなければならないと思う。