1.           請願の趣旨

がんは、現在日本人の死亡原因の第1位にあげられ、2人に1人ががんに冒され、そのため年間30万人(島根県では2300人)が命を失っています。

勿論、日々さまざまな治療法が研究され、臨床の現場でもあらゆる治療法が行われていますが、残念ながら、島根県内の医療機関には、その重要な治療法のひとつである抗がん剤治療の専門医(腫瘍内科医)が1人もいません。

つきましては、島根県議会として、我が国における抗がん剤治療の充実のため、世界の標準的な治療が日本でも安心して行えるとともに、早急に抗がん剤に精通した専門医を育成するよう国に対して要望していただきたい。

合わせて、島根県としても県内で安心して抗ガン剤治療が行えるよう、専門医の早期育成に向けて、島根医科大学等関係機関に対して働きかけていただきたい。(以上、署名簿を添えて請願します。)


2.            請願の理由

抗がん剤の専門医である腫瘍内科医は、米国には約2万人いるといわれていますが、日本では同様の医師が要請されていないろいう実態があります。

そのため、日本では、その分野の専門家ではない医師たちが、世界で標準的な抗がん剤治療法を知らずに治療に当たるケースがあります。また、欧米などで広く使われている抗がん剤の標準的な治療薬が、日本では未確認であったり、保険適応外で高額な費用がかかるため治療を浮け難い現実もあります。

専門医の不足と標準治療薬の問題などから、日本のがん医療は欧米から大きく遅れをとってしまいました。

さらに、国内でも認められている標準的な抗がん剤さえ積極的に使おうとしない医師がいる現状もあります。なぜなら、抗がん剤を扱っている医師の中心が外科医だからです。

外科医は手術のスペシャリストではあっても、必ずしも抗がん剤治療における専門医ではありません。その場合、嘔吐・食欲不振などの辛い副作用を十分にコントロールできないこともあります。

苦しい抗がん剤治療を経験した患者たちは、今後も同じ治療を選択するでしょうか。抵抗なく「受ける」と答える患者は、ほとんどいないでしょう。

最近日本では、肺がんの治療薬「イレッサ」による副作用のため、246人が亡くなりました。埼玉医大でも、若い女性患者が抗がん剤の誤投与で亡くなっています。いずれも担当医が抗がん剤治療の専門医であれば、結果は違ったはずです。専門知識の乏しい医師による抗がん剤治療が悲惨な結果を招くことは、患者にとっては受け入れ難いことです。

島根県内の医療機関に抗がん剤治療の専門医が一人もいないという事実を知った患者たちは、どのように対処すればよいのでしょうか?島根県では、実際には治療法があるにもかかわらず、「もう治療法がない」と医師から告げられるケースが少なくないのが現状ですが、幸運にも、私たち一部の患者は東京で専門医を見つけ、「副作用が少なく延命効果の高い標準治療」を受けることができました。

しかし、がんとの闘いは長期間に及ぶため、経済的にも、肉体的にも、相当な負担を強いられます。

地域間の医療格差をなくすため、抗がん剤治療専門医(腫瘍内科医)の早期育成に向けて、島根医科大学とう関係機関に対して働きかけること、また、世界の標準的な治療薬が日本でも安心して使えるよう国に対して働きかけるなど協力を要望するものです。

県議会議員の皆様に、島根県のがん医療改善のためにご協力いただきますようよろしくお願い申し上げます。





                  
         



抗がん剤治療専門医(腫瘍内科医)の早期育成について