我が国におけるがん死亡率は1981年以降死亡原因の第一位となり、現在では3人に1人ががんで亡くなる状況にあるが、がん医療は、手術、放射線治療、抗がん剤治療などそれぞれの分野で研究が進められ、撲滅に向け着実に成果を得ているところである。

しかしながら、がんの治療法のうちの抗がん剤治療に関し、これを受けるがん患者の多くが副作用に苦しむ現実がある。

その一方、抗がん剤に精通した専門医による治療によって、副作用も少なく発病前とほぼ同様の日常生活、社会活動を営める患者もある。こうした患者の多くは専門医を自らの努力によって探し求める実態にあって、遠隔の地に住む患者の場合ほど、その治療を受けるための経済的、肉体的負担は大きなものとなる。

こうした実態の背景には、我が国において抗がん剤による治療を専門とする分野が未確立でその専門医が極めて少ないことから、治療現場で抗がん剤投与が適切にコントロールされていない場合が多いとの指摘がある。さらに、世界的には標準薬として認知されている抗がん剤が、我が国では保険適用外のものも多いため、薬物治療の幅の狭さも問題視されている。

今や、がん治療は、世界一の長寿国を維持し国民の健康を守るという重要な社会問題のひとつとして位置づけられるものである。

関係省庁の連携のもと、がん対策がより一層進展するよう、以下の事項を強く要望する。

   1.   各医科大学に腫瘍学に関する講座を開設する等、早急にがん治療を専門とする医師の育成を図るとともに、この分野での地域間格差の是正を実現すること。

 2.            がん治療に係わる新薬の慎重かつ速やかな開発、抗がん剤併用療法の研究体制の拡充など、がん患者により質の高い治療が提供できる対策を講じること。

以上、地方自治方第99条の規定により意見書を提出する。 

                     島根県議会                     

(提出先)

衆議院議長

参議院議長

内閣総理大臣

厚生労働大臣

文部科学大臣






                       




「抗がん剤治療専門医の育成等」に関する意見書