平成19年6月定例県議会(代表質問)  〜 佐々木雄三 〜

本文へジャンプ 平成19年6月18日 
        


 自民党議員連盟の佐々木雄三でございます。会派を代表して質問を行います。知事をはじめ関係部長の御答弁をお願いします。


 島根県は今春、20年ぶりに、溝口善兵衛知事という新たなリーダーを迎えました。まずは、急激な人口減少や少子高齢化といった宿命的な課題に加え、深刻な財政難や地域間競争の激化、地方分権への対応など、数々の難題に直面する中、船出した「溝口丸」がどういった羅針盤を持ち、地域、県民をどのような行き先に導こうとしておられるのか、その舵取りの理念、目標をお聞きしたいと思います。

 さて、我々が薫陶を受けた故・竹下登元首相はかつて、インタビューで座右の銘を問われ、「無限の理念を掲げて、ひたすら我が道を行く」と答えておられます。また、米国・ワシントンで開かれ、議長を務められたIMF世界銀行総会の基調講演で、「対立と抗争の中に進歩はなく、対話と協調の中にこそ繁栄がある」と説かれました。


 しかし、「言うは易く、行うは難(かた)し」。理念と現実の間で葛藤を強いられる政治の世界で「我が道を行く」のは、容易ではありません。一方で、行き過ぎれば、「独善」に陥る恐れもあります。


 「対話と協調」もまた、しかりであります。ともすれば、あちこちに配慮するあまり、つぎはぎだらけの「妥協の産物」におちいりかねません。


 しかも、「我が道を行く」と「対話と協調」は、相反する理念のようにも聞こえます。果たしてどのようにすれば、それぞれを実現し、両立させることができるのでしょうか。


 ヒントは「論語」の中にあります。偉大な思想家、孔子は君子の持つべき座標軸として、「恒(つね)」を重んじました。恒久平和の「恒(こう)」の字であります。つねは、経済の「経」とも書きます。この字は、織物の縦糸を意味しております。織物はしっかりとした縦糸に貫かれているからこそ、美しく、かつ丈夫たり得るのであります。


 孔子はさらに、「現実的な選択」という意味で「権(はかる)」ことを重要視しました。はかるとは、権力の「権(けん)」の字を充てます。木偏が使われているように、権(けん)とはもともと、天秤(てんびん)を指します。そこから派生し、調和・均衡を図るという意味も包含しています。天秤は、中心の軸がしっかりしていてこそ、揺れながらも、バランスが取れるのであります。


 「恒(つね)」と「権(はかる)」、言い換えるなら、現実的な選択とは、ゆるぎない信念があってこそ可能になると、孔子は言いたかったのではないでしょうか。それこそ、真の意味でのバランス感覚ではないかと思います。それは、いわゆる「足して二で割る」ような手法とは、似て非なるものであります。


 そういった君子、あるいは政治のあるべき姿は、孔子が生きた時代から、二千五百年の時を経た現代にも、共通します。竹下先生が言われた「我が道を行く」と「対話と協調」という理念もまた、同じようなことを言わんとしているのではないでしょうか。溝口知事におかれましては、ぜひとも、為政者の心構えとして、胸に刻んでいただきいと思います。




 それでは、まず、知事の政治姿勢について伺います。

 知事は議会冒頭、「県民中心の県民に信頼される県政」を目指すとされ、そしてその達成のために、@県民との対話の強化、A議会との率直な意見交換の実施、B分権時代にふさわしい県と市町村の役割分担と連携・協力の推進、C自由闊達で柔軟な県庁の組織づくり、D他県との協同による広域的な課題解決という5つの基本的な県政運営の考えを示されました。また、県執行部のトップとしてのリーダーシップと、組織としてのチームワークを重視することも強調されています。


 県政運営に対するまさに現実的な取り組み手法として、溝口色が出ていると感じますが、これらの知事の政治姿勢について何点か伺います。


 まず、知事の島根への思いについてであります。


 県行政のトップとして、目の前にある課題について、常に現実的な対応をとっていくことは当然必要なことではありますが、知事の夢や思いに関する部分についてお尋ねしたいと思います。


 島根丸の舵取り役となられた溝口知事のこの島根への思い、生まれ育ったふるさととしての島根、また、県外のみならず国外での生活も長かった知事が外から見てきた島根、そして島根県民の一人になられて感じる島根について伺います。また、これらの視点から島根の強みや弱みをどう見ているのか、まず率直なお気持ちを伺います。              


 次に、県政の重要課題を表す言葉として「活力ある島根を築いていく」ことを挙げられましたが、この「活力ある島根」の具体像について、どう考えておられるのか伺います。                  


 また、「議会と率直で忌憚のない議論をする」との政治姿勢についてでありますが、厳しい財政状況が続く中、待ったなしの行政課題が山積している今日の状況であります。議会と執行部は緊張感の中にも意思疎通を図りながら県政の振興を図っていく必要があり、このような知事の姿勢は議会としても評価するところであります。


 そこで、議会と県政に関する議論の場を本会議だけに限定することなく、特別委員会や常任委員会などにおいても、特定のテーマや重要案件について知事と議員が意見交換を行ったり、知事の考えを御説明いただくなど必要に応じて議論の場を設けてはいかがかと思いますが、知事のお考えを伺います。        


              

 次に地域格差と財政問題について伺います。


 都市部で続く好景気を背景に、日本国内が光と影に二極分化し、格差が広がりつつあります。好景気は続いているとしても、依然としてその恩恵は地域や業種、企業の規模などによりばらつきがあり、本県のような産業の集積が遅れた地域には及んでいないと感じられます。そしてこれにより、自治体財政の貧富の差も急速に拡大しております。


 先日、NHKで地域格差をテーマにした番組が放映されました。その中で、人口20万人前後の北海道釧路市と東京都港区の比較がされていましたが、釧路では子供の医療費が小学校1年生からかかるのに、港区では中学校卒業まで無料、さらに港区では、私立の幼稚園児一人あたりに、年間20万円もの補助が出ているとのことでした。


 また東京都では、低所得者を対象に、都道府県では初めてとなる、年間約50億円もの一律減税を行うという方針を決定されたとの報道も聞いています。


 本県でも、ご承知のとおり自治体の財政状況の悪化から医療・福祉の提供、産業活動支援、教育環境の整備など、あらゆる面で行政サービスの維持が難しくなっております。


 このように、便利で住みやすい地域はより良く、逆に税収の乏しい地域では、基本的な住民サービスすらその提供水準の維持がより困難になるという格差拡大の現実があります。このことにより、地方から都会への人口移動に拍車をかけ、されがまたさらなる格差を生み出すという「負の連鎖」につながりかねないと危機感を募らせています。


 そこでまず、都市での生活の長かった知事に地域格差をどう見ているのか、ご認識を伺います。                    

 一方で、ここにきて地域格差を問題視し、政治の場で格差問題の是正に取り組もうという動きも出始めています。「ふるさと納税制度」や「出身地の自治体への寄付金の優遇税制」、「法人2税の地方消費税への振り替え」等財政調整の新たな手法の議論が活発になされています。


 そもそも、経済という言葉は「経国済民」を略したものであり、国を治めて民を救うという意味であります。経済の発展は、一部の地域や住民に恩恵をもたらすものではなく、すべての地域住民の生活向上につながるものであるべきと考えます。また、財政力の格差が人の命の重さや人間としての尊厳の格差につながることは、許されることではないのであります。


 提案されている新たな制度は、制度的に煮詰めていくべき課題も多いようです。しかし、これら地域格差を是正しようとする議論の高まりは、ようやく地方に目が向いてきたことを示しているのではと感じており、その議論の行く末に期待しているところであります。


 そこで、これらの地域格差の是正に向けた議論を知事はどう見ておられるのか伺います。また、これらの新たな制度だけでなく、本来の財政調整機能を担う地方交付税の確保など安定した地方財政の確立に向けて、どのような戦略と取り組み姿勢で臨まれるのか、お考えを伺います。    


 また、財政赤字の解消に向け、財源確保とともに、さらなる行財政改革にが必要です。行財政改革については、これまで自民党議員連盟そして県議会も県執行部とともに様々な面において検討を進め、改革を実行に移してまいりました。


 議員、三役の報酬カット、県職員の給与カット、事務事業の見直しなどは一例ではありますが、大幅な歳出削減という形で県民に負担を強いる以上、報酬や給与のカットは、我々も「痛み」を共有する必要があるという、やむにやまざる手だてであったと考えております。


 しかしながら、一部に改革が十分と言い難い部分もあったと思います。例えば、県外郭団体の見直しであります。抜本的な改革を求める我々の主張に対し、県の側からは、いろいろな「抵抗」があったことも、事実であります。よく、県の職員から、「県益を守る」という言葉が聞かれますが、県益が県民の利益でなく、県庁という組織の利益を守るという意味になってはいけません。


 先日も、マスコミで、県幹部OBの県外郭団体へのいわゆる「天下り」が慣例化していることが報じられましたが、その背景にも、ある種の「甘え」とも言える体質が見え隠れしているような気がします。公務員という「公(おおやけ)」をつかさどる者の規範となる物差しは、組織という「内」の論理でなく、県民の目にどう映るという「外」からの視線を意識し、それに耐えうるものでなければなりません。そういう厳しさがあればこそ、県民も改革の痛みに耐え引いては改革が前進することができるのであります。


 国の財政状況、また、県財政の実態を考えれば、まだまだ、今まで以上に、厳しい改革に取り組まなければなりません。であればこそ、われわれ県議会議員、県職員がまず、自らの身を律する必要があります。自ら立つという「自立」は、自ら律するという「自律」の先にあるということを忘れてはなりません。


 さて、現実的な財政赤字の解消についててですが、事務・事業の見直し、職員給与の削減など様々なこれまでの取り組みの結果としてもまだ毎年200億円台の赤字が相当期間続くと見込まれている状況であります。財源確保に向けた取り組みを強力に進めていくとともに、さらに財政改革を進める必要があり、知事は財政改革を喫緊の課題として掲げ、「9月中旬にまでに、中長期的な基本方針を示す」とされています。


 その内容については、「改革推進会議」での検討を踏まえることとされていますが、知事御自身は、具体的改革の方向性をどのようにお考えなのか伺います。
                         

 また、「改革推進会議」はどのような狙いで設置し、県政運営にどう活かしていこうと考えておられるのか、伺います。         


 さらに、改革推進会議での検討を踏まえ、平成19年度中に総合発展計画を策定するとのことですが、地域開発型の計画策定が困難な現状下で、どのような特色や方向性を持った計画とされようとしているのか、お考えを伺います。   

                       

 また、総合開発計画のみならず、各部の計画策定や施策の立案の際には、経済動向、人口動態など関係するデータの詳細な分析・予測に基づき、将来を見越した的確な戦略策定を行う必要があります。地域の実態が深刻で、少ない投資で最大限の成果を引き出すためには、なおさらこのような作業を丁寧かつ的確に行う必要があり、統計学や社会学に精通した専門家の招聘や利活用が必要と思いますが、知事のご見解を伺います。      




 次に、産業振興について伺います。


 知事は、財政再建と並んで県政の最重要課題に産業振興を挙げておられます。県民それぞれが県内で定住するためには、そこで生活するための所得を得る必要があります。そして、地域で獲得できる所得の合計がその地域でどれだけの人が暮らすことを可能にできるのかという「人口扶養力」を示すものであると言えます。


 本年3月に県がまとめられた「地域経済構造分析」を見ますと、公共事業関連など公的産業部門への依存度の高い本県は、県や市町村の財政悪化により、平成27年の住民所得の合計は、平成15年に比べ総額1,681億円も減少するとの推計結果が出ています。


 非常に単純な試算ではありますが、総務省の家計調査を使って、住民総所得の減少の影響を見てみますと、家計調査による年間一人あたりの消費支出は約120万円、ようするに年間一人当たりが生活するのに必要な金額が120万円とすると、この1,681億円の住民所得の減少は、県の人口扶養力を約14万人減少させることになります。


 本年5月29日に厚生労働省が公表した2035年の推計人口では、本県は平成17年よりも約19万人も人口が減少し、約55万人となるとの推計値を示しております。両者の分析は、整合のとれたものではありませんが、同じような傾向を示しており、いずれにしても産業振興に力を入れ、産業構造の転換を急ぎ行う必要があることを明白に示しています。


 そこで、グローバルな競争力を持ち雇用の効果が高い産業群の誘致や育成を強力に進めていく必要がありますが、一方で、中山間地域や離島では、先端産業の誘致や育成は非常に困難と言わざるを得ません。


 産業集積の拠点となる地域を県下に配置する一方で、その影響が及びにくい地域においては、農林水産業など地域固有の資源の活用と、生産・加工・販売・交流など様々な業種が連携し、付加価値を高める地域資源活用型産業の振興や、高齢化社会に対応した福祉産業など地域の特色ある産業の展開を図る必要があります。先端産業と地域の特色ある産業がバランス良く県内に展開されることにより、都市部と中山間地域など県内地域全体の共存、それぞれの役割に応じた若者や高齢者の産業活動への参加が可能になるなど、県内全体の活性化につながるものと考えております。


 また、先に格差についての問題意識を述べましたが、もちろん、頑張る努力をしない地域や個人が「甘え」という批判を浴びてもやむを得ない面があるでしょうが、近年の格差問題の深刻さは努力が簡単に報われないことにあるのではないかと思います。働く意欲があるにもかかわらず、職に就けない、ふるさとに定住したい、あるいは帰りたい若者が、雇用の場の少なさから、願いが叶わない、そんな状態には心が痛みます。


 以上のことから、知事の産業振興に関するスタンスについて何点か伺います。


 まず、先ほど述べました先端産業と地域資源活用型産業のバランスのとれた振興についての知事の所感を伺います。           


 次に、産業活性化戦略会議についてであります。すでに第1回の会議が開催されたようですが、この会議は何を対象に、どのような方向性を出そうとしているのか伺います。委員構成などを見ると先端産業の振興をターゲットにしている印象を持ちますが、地域資源活用型産業については、この戦略会議においてはどのように位置づけられるのか、併せて伺います。 


 また、これまで行ってきた新産業育成等の産業振興への取り組みを知事は現時点でどう見ておられるのか、その上で、今後の産業振興の考え方や取り組み手法はどう変わっていくのか伺います。        


 さらに、ふるさとへ帰りたい、定住したい若者に対して、手を差し延べ、救うことこそ、まさに行政の役割と考えますが、溝口知事のご所見を伺います。   


                         

 次に、農林水産業の振興についてであります。


 まず、農業の振興についてでありますが、本年2月に議員提案により制定した「しまね食と農の県民条例」では、農業の多面的機能を活かしながら、環境との調和や食の安全に配慮した農業を推進すると定めたところであります。


 今後、この条例の趣旨に沿った農業の振興を求めていきたいと思いますが、この条例に基づく取り組みを今後どのように進めて行かれるのか伺います。    
                         

 また、この条例は、農業生産の基盤であり、かつ県土の保全や災害防止に多大な役割を果たしている農地の維持、特に耕作放棄地対策を重要なポイントに位置づけていますが、これへの対応をどのように考えておられるのか伺います。                        


 林業については、県において、昨年12月に新森林・林業活性化プラン後期施策を策定され、木材の需要側に応える生産体制を整備し、伐採期を迎えた本県の山林の利用を図り、育林、伐採、利用、植林のサイクルを循環させる取り組みを進めるとされたところであります。   


 そこで、木材が安定的に、生産・加工・流通・消費される仕組みづくりについて、具体的にどのように進めていくのか伺います。   


 漁業については、魚価の低迷などから漁業を取り巻く経営環境は厳しいものがあり、一部「どんちっち」などのブランド化の成果もありますが、全般的には就労者の減少と高齢化が進んでいる状態にあります。


 お隣の山口県では、県や市の取り組みにより、毎年新規就労者が20人前後いると聞いております。そこで、本県の人材確保の取り組みの現状と今後の取り組みの考え方について伺います。          




  次に、観光振興についてであります。


 自然や景観、文化など本県の持つ資源は一級品であると思います。松江開府400年を記念して出版された「和の心、日本の美、松江」には、日本の各界の有名人、文化人が島根を絶賛する声が掲載されています。


 女優の黒木瞳さんは、「宍道湖の夕陽は、人の心も焦がすほど真っ赤に燃え、天に舞う天女の様な雲を照らしていました。」と述べていますし、詩人の佐藤愛子さんは、「松江は旅人に優しい。近い将来、心が疲弊した人々が必ずや訪れることになるでしょう」と語っています。


 県東部のみならず、石見銀山、小京都津和野、人麻呂の里益田、隠岐の島など県下全域に地域固有の優れた資源が存在しています。


 私は、これらの自然、歴史的景観、人情、文化などを最大限に活かす観光振興をすべきと考えます。


 知事は、マニュフェストで年間の観光入り込み客数3,000万人を目指すとされていますが、大手のエージェント頼りで安売り競争に乗った、単なる量の拡大を目指すのではなく、一級品の地域資源を理解していただける方を対象にした、質の高い本県ならではの特色ある観光振興を行うべきと考えますが、知事のお考えを伺います。              


 また、そのためには、地元自らが県内の関係者と連携を図り、県内旅行を企画しPRするような取り組みが行われるよう支援することが必要と考えますがいかがお考えか伺います。                

 さらに、県内の観光振興に係る取り組みをレベルアップしていくためには、現状の把握や分析に基づく的確な施策の立案が必要であります。観光入り込み客の正確な把握や来訪者の満足度調査、都市部での需要調査など現状把握やデータ分析を行うことが、まずは必要不可欠であり、県が担うべき第一の役割であると考えますが、県の取り組みの考えを伺います。 




 次に道路整備の促進について伺います。


 知事は、産業振興にとって高速道路ネットワークの整備は、極めて重要である述べられています。まさに、産業振興の上で、道路の重要性を認識しておられると確信しました。


 しかし、高速道路整備に関しては、平成15年の道路公団民営化の際、全国の国幹道11,520kmの内、引き続き整備を進めるべき整備計画路線になったのは9,342km、この中には山陰道出雲以西が含まれませんでした。このため、前知事や、我々県議会も、敢えて地方負担金が生じる国道バイパス方式による高規格道路建設を選択し、建設を推進して来たところですが、現在事業中の約80kmの完成でさえ、平成30年頃となると聞いていますし、約60kmが未事業区間として残されています。


 高速道路だけでなく、県内一般道路(国・県道)についても、整備が進んだとは言え全国平均の整備率73%に比べ本県は61%と、道路の整備は約20年遅れており、本県の特に中山間地域での道路整備は、未だ道半ばの感が否めません。


 山陰道や尾道松江線による県内や県外主要地への時間距離の短縮、地域間を安全に結ぶ一般地方道路の整備は、我が島根県の産業振興のほか、医療、福祉、文化交流にとっても、そして公共交通機関の発達していない本県にとって、なくてはならない基本的社会基盤の整備と考えています。


 道路特定財源の一般財源化論や無駄な地方の高速道路論など、地方切り捨ての論議が続いてきましたが、知事は、県内の高速道路、そして住民の生活を支え、地域間を繋ぐ地方道路について、本県の実状、整備の必要性と果たす役割をどのように認識しておられるのか、また、今後の道路整備の更なる進捗についてのお考えを伺います。             


 前澄田知事は「私は道路知事と呼ばれたい」とおっしゃっておられました。溝口知事は財務官時代に「ミスター・ドル」と呼ばれていたそうですが、島根県知事となられた今、「ミスター・どうろ」と呼ばれるような活躍を期待しております。




 次に、過疎対策についてであります。


 高度経済成長期以降、地方から産業集積の進んだ太平洋ベルト地帯への人口移動が進み、地方では人口の著しい減少に伴って地域社会における活力が低下したため、昭和45年に議員立法で、「過疎地域緊急対策措置法」が制定され、それ以来3回にわたる制度改正を伴いながらも、過疎対策が講じられてきました。


 過疎法による対策は、地域の発展に必要な基礎的な条件である道路ネットワーク、情報通信、下水道などの社会資本の整備に大きな役割を果たしてきたところであります。


 現行の「過疎地域自立促進特別措置法」は、平成21年度末に期限切れとなりますが、社会資本の整備は未だ不十分であることに加え、少子高齢化の予想を上回る進行、医師不足、限界集落の増加など新たな課題の発生も見られるところであり、過疎対策は、これからも必要不可欠な施策と言えます。


 そこで、新たな過疎対策立法に向けて、知事がリーダーシップをとって、県内の関係団体のみならず同様な状況にある他県なども巻き込みながら、過疎対策の継続に向けて取り組みを行っていただきたいと考えておりますが、知事の意気込みや今後の取り組みの方針をお尋ねします。    




 次に、医療の提供体制及びがん対策についてであります。


 本県の中山間地域や離島では医師の確保が困難となっており、昨年発生した隠岐の産婦人科医の不在に象徴されるように地域医療の提供体制が揺らいでいる状態にあります。加えて、診療報酬改定で、いわゆる「7対1」の看護配置の基準が新設され、この取得を目指す大学病院を始め、大都市の病院が全国から大量の看護師を採用し、看護師不足に拍車がかかるといった事態が発生し、大きな問題となっていると聞いています。


 医師不足に加え、看護師の確保さえも困難な状況となると本県の地域医療は、本当に大丈夫なのか、今後どうなってくいのか心配は増すばかりであります。


 そこで、まず、中山間地域や離島など地域医療の確保に関して知事はいかがお考えか伺います。併せて今後の医師及び看護師など医療を担う人材の確保の取り組みをどのように進めていくのか、伺います。     


 県内でも、他の主要な病院では、既に7対1の看護配置の導入を進めており、看護師の確保を巡り、熾烈な争奪戦が起きている聞いています。県立病院、とりわけ、中央病院は本県の高度医療や特殊医療を担う病院として、質の高い医療を提供することが使命であります。そのためにも、医療の提供体制の充実は必須の課題であり、私としては、その一つとして「7対1」看護配置の導入を早期に目指すべきと考えますが、医療現場の最高責任者となられた、病院事業管理者のお考えを伺います。 
      


 また、昨年6月に施行された医療制度改革関連法につきましては、医療費適正化計画の策定や療養病床の再編成などについて、県として取り組みべき課題も多い認識していますが、これらへの対応について伺います。          

            

 また、がん対策についてですが、がんは国民の死亡原因の第1位を占めるようになって久しく、県内でも毎年2,500人もの人が、がんでなくなっております。そこで、本県では自民党議員連盟が中心となり、昨年9月に議員提案による「がん対策推進条例」を策定し、がん対策を強力に進めることとしたところです。


 私ども島根県議会自民党議員連盟でも、がん対策推進議員連盟を結成し、本県のがん医療のさらなる向上に向け、県内患者会とも一体となって取り組みを進めてまいる所存であります。


 また、このような中、がん対策について県内の気運の盛り上がりや議連の働きかけもあり、財団法人島根難病研究所においては、この6月15日に約7億円を目標とする「がん基金」の造成に向けた募金活動に取り組むこととされました。既に多くの県民や民間企業からは心強い御賛同の声が寄せられております。


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 今後、この「がん基金」は、県内のがん拠点病院の設備充実などがん医療体制の向上のために大きな役割を果たしていくものと期待しているところであります。今はスタートしたばかりの取り組みですが、小さな灯火が天も焦がす大きな炎となるがごとく、知事には先頭に立って大きな県民運動になるよう育てていただきたいと考えております。


 そこで、知事にこのような本県のがん対策の取り組みについての所感を伺うとともに、知事自ら、県民や県外の県人会への呼びかけ、人脈の活用などにより基金の充実に向けて、積極的な取り組みをお願いしたいと思いますが、いかがお考えか伺います。                


 また、がん対策推進条例に基づき今年度から「がん対策推進事業」がスタートすることとなりました。財政状況の厳しい中、本格的な対策が始まることに関しては、一定の評価をしているところでありますが、拠点病院の設備の充実、腫瘍内科医等の人材の育成、拠点病院の連携など、がん対策を進めていく上での課題は多いと感じております。さらに、中性子線での治療など、がん医療分野での技術は、刻一刻と進んでおり、これらに対応していくために、国立がんセンターとの太いパイプと連携が必要と考えますが、これらを踏まえたがん対策の取り組みの方向性を伺います。     




 次に、原子力安全対策についてであります。


 エネルギー資源の乏しい我が国にとって、国民生活や経済活動に必要不可欠な電力の確保に、原子力発電施設は重要な役割を担っております。


 また、エネルギー資源の有効活用と安定供給に寄与する、いわゆるプルサーマル計画についても推進されているところであります。


 しかし、昨年秋以降、各電力会社でのデータ改ざんや並びにトラブルの隠蔽等が明らかになっており、これは国民の不安感や不信感を増大させるものであります。


 国の指示に基づく、各電力会社の発電施設についての総点検の結果、全国では316の不適切な事案が報告されておりますが、中国電力においても島根原発関係で29事案が報告され、中でも2事案が、法令や規制に抵触し、安全の確保上問題があったとされる評価基準Tに該当していたことがわかりました。


 このようなことは、原子力発電施設に対する県民の信頼を大きく損なうものであるとともに、県民の安全を守る上であってならない不正であります。


 そこで、知事にこの度の不適切事案を踏まえての島根原子力発電所の安全対策とプルサーマル計画についてのお考えを伺います。    


 また、二度とこのような不適切事案が発生しないよう事業者の猛省を求めたいと考えますが、このたびの不適切事案への県の対応状況及び再発防止策について伺います。                   




 次に、島根の教育についてであります。


 島根県内の教育水準の低下が危惧されております。大手予備校の集計によると、平成16・17年ともに、大学入試センター試験の島根県内受験生の成績は全国45位程度とのことであり、また、昨年度に県内小・中学校で実施された学力調査の結果でも、小学校5年生の理科、小学校6年生の算数、中学校2年生の理科などで、全国平均を大きく下回っており、学力面での低下が問題になっております。


 また、近年、県内での教員の不祥事の多発や子供達とのコミュニケーション能力に欠けたり、授業がきちんとできないなど教員の指導力の低下もあると伺います。一方、家庭学習の習慣づけという学習面のみならず、人としての基本的な礼儀、マナーなどの生活態度、食生活や睡眠などの生活習慣などの面での家庭の教育力の低下、地域における子供達への関心と関わり具合などの面での地域の教育力の低下など総合的な教育力の低下が見られると感じております。


 そこでまず、知事は県内教育の現状をどのように認識されておられるのか、また、総合的な教育力の向上に向けていかがお考えか、伺います。 


 また、本県では教育ビジョン21を策定し、島根らしさを取り入れた教育、ふるさと教育を重視することとしております。これはいわゆる大学進学を目的とした競争型教育システムとは異なるものでありますが、一方で学力重視の現実社会を考えた時、これらへの知事の所感を伺います。    


 県内では、少子化が進む中で、進学希望いわゆる普通科志望が強くなる傾向にあります。しかし、大学への進学者は、大学卒業後に県内に帰ってくる割合は非常に小さいように感じております。逆に専門高校の生徒は、進路の地元志向が強く、事実卒業後の地元定着の割合も高い実情にあります。多くの地元産業界が求める人材を輩出する専門高校と普通高校のバランスが崩れているように感じております。


 山形県の長井市では、地元の地場産業と工業高校が連携し、地場産業の求める人材を育成する取り組みが熱心に行われていると聞いています。長井市の工業高校は地場産業への人材供給と活性化に大きな役割を果たしており、中学生の工業高校への進学志望も高いと聞いております。


 本県においても、このような取り組みが必要と思いますが、県内の高等学校のあり方、及び専門高校と県内産業の結びつきについて知事はいかがお考えか、伺います。                   




  最後に、石見銀山遺跡の世界遺産登録についてであります。


 石見銀山遺跡の世界遺産登録については、これまで長きにわたり、官民一体となった取り組みを進めてきたところであり、平成13年4月に我が国の世界遺産暫定一覧表に記載され、昨年1月にユネスコに推薦書を提出するなど、順調に登録に向けての歩みを進めてきたところであります。


 そういう中、本年5月12日に発表された国際記念物遺跡会議、いわゆるイコモスの登録見送りという評価は、誠に意外であり、残念な内容でありました。


 このイコモスの評価への衝撃は大きいものがありましたが、逆転登録に向けての体制の立て直しと、取り組みは素早いものがあったと感じています。


イコモスの勧告が発表の後、即座にユネスコ日本政府代表の近藤大使と対応を協議され、5月28日には近藤大使自らが現地を視察されました。登録に向けて大きなカギを握る近藤大使が実際に現地を見学した上で、ユネスコの登録会議に向けて、自らの言葉で銀山の歴史的・文化的意義を各国の代表に説明されるのは心強いものがあります。


 さらに、今月上旬には、「世界遺産にふさわしい顕著な普遍的な価値の証明」が不十分とされるイコモスの指摘に対しての追加資料をまとめるとともに、県からも職員を派遣し、国・県・市など関係者一体となって、ロビー活動を繰り広げるなど、積極的な取り組みをされてきたところであります。


 そこで、現段階での世界遺産登録への見込みと残された期間の取り組みについて伺います。                  


 残された時間は、わずかではありますが、最後まで全力の取り組みをお願いしたいと思います。




 さて、冒頭に引用した「論語」の為政編に「子曰わく、政を為すに徳を以てすれば、譬えば北辰のその所に居て衆星のこれに共するがごとし」とあります。


 「徳を中軸に据えた政治は、ちょうど北極星が天の中心にあって、無数の星がその方向に向いているように、人心は為政者に帰服し、秩序が生まれる」という意味であります。


 溝口知事には、県執行部の北極星としてのご活躍を期待するものでありますし、また、知事選に立候補されるにあたって掲げられた高邁な志を忘れることなく、県政運営に邁進されたいと願います。そして、われわれ自民党議員連盟に属する県議会議員もまた、同じ志を持つ同志でありたいと決意する次第であります。


 よく言われるように、県執行部と県議会が同じ方向を見据え、両輪となって政治を牽引できるなら、どのような困難に直面しても、きっと、県民の後押しを得て、明るい未来が切り開かれていくことでありましょう。


 これまで、私が縷々(るる)申し上げてきた行財政改革、産業振興、教育などをくくる共通したキーワードは、「人づくり」であります。溝口知事の強いリーダーシップの下、われわれ県議会議員だけでなく、県執行部や各界各層の人々の力を結集し、そして新たに育まれた若者たちの力も得ながら、明日への扉が開かれることを念じ、質問を終わりたいと思います。

 


           
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                           知事答弁

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