溝 口 知 事 答 弁
本文へジャンプ 平成19年6月18日 

                         


(問)島根への思い、ふるさととしての島根、外から見てきた島根、島根県民の一人になって感じる島根について伺う。また、島根の強みや弱みについて伺う。

(答)佐々木議員の御質問にお答えします。

 まず、私の島根に対する思いについて質問がありました。

 一般論として申し上げれば、日本は明治以降、あるいは戦後、欧米先進国に追いつくよう経済発展をする、そのために大都市に人口が集中するということが起こってまいりました。島根は、山あり、川ありの地理的条件から、この発展から、やや隔離されてきたというのが私の見方であります。

 今、世界を見渡すと、日本を含め先進国は成熟化した社会に移ろうとしています。大都市の喧噪を離れて自然の中でゆったりと暮らしたい、あるいは自然の中で働きたい、そこで子育てをしたいと思う人々、また、伝統的な文化や手作りのものに価値を見いだす人々が増えてきております。

 従来は、「弱み」であったものが「強み」に代わる時代になってきていると感じております。

 そうした観点にたって、あらためて島根を見渡しますと、我々は、豊かな自然、古い良き文化、伝統、真面目でよく働く人々など、現代が求めるものの多くを持ち、大きな可能性を有しております。

 その可能性を掘り起こし、県民一人ひとりがこの島根に自信と誇りを持つようになることが、県政の大きな課題であります。

 そのために私は、先頭に立って全力を尽くして働いていく所存であります。



(問) 「活力ある島根」の具体像について伺う。

(答)次に、「活力ある島根」の具体像についてであります。

  「活力ある島根」の姿は、象徴的に言いますと、若者たちが、活き活きと働ける雇用の場が増えると言うことであります。

 このためには、地域の資源を活かした地場産業の拡大、農業・観光などの振興、競争力のある企業の誘致などが必要であります。

  これにより雇用が増え、県内の若者が、県内に残って働き、県外から若者が島根に魅力を感じ、働きに戻ってくる、やってくる、そして、これらの若者が、島根の自然の中で安心して子育てをしているといった島根を目指して働いていきたいと考えております。



(問)特別委員会や常任委員会などにおいても、特定のテーマや重要案件について、知事と議員が意見交換を行ったり、知事の考えを説明してもらうなど必要に応じて議論の場を設けてはいかがか、所見を伺う。

(答)次に、特別委員会等における、議会と知事との議論の場の設定についてであります。

 議会と知事をトップとする県執行部は県政という車の両輪であります。相互に率直で忌憚のない議論をすることにより、この両輪が、島根の発展という大きな目標に向かって力強く円滑に進むことが大事であります。

 したがいまして、特別委員会あるいは常任委員会におきまして、議会の要請があれば、私が出席し、私の考えを説明したり、意見交換を行わせていただきたいと考えています。



(問)地域格差をどう見ているのか、認識を伺う。

(答)次に、大都市との地域格差についてであります。

 東京のような大都市は、産業が集積し、これまでの日本の発展をリードし、若者たちを惹きつけてきたが、大都市は過密で、生活や子育ては決して楽ではない。むしろ難しいというのが私の実感です。

 つまり、大都市に集中してきた発展とそこから生ずる地域格差の拡大は、日本全体としては不健全なものであるというのが私の考えです。地方を大事にし、地方が発展していくことにより、日本全体がバランスのとれた健全な発展が可能になると考えております。

 そのためには、地方財政においては、大都市圏に片寄った財源配分ではなく、地方にも充分配慮した財源配分が必要であり、私はこのことを政府に対して強く働きかけていきたいと考えております。



問)地域格差の是正に向けた議論をどう見ているのか伺う。また、新たな制度だけでなく、地方交付税の確保など安定した地方財政の確立に向けて、どのような戦略と取組姿勢で臨むのか伺う。


(答)次に、財政力格差の是正についてであります。

 近年の景気の回復によって、東京などの大都市圏においては、法人二税を中心に地方税収の増加が顕著ですが、景気の回復が遅れている島根県のような団体では、税収の増加に多くを期待できない状況にあります。

 さらには、税収の不均衡を調整し、全国どこに住んでいても適切な行政サービスが受けられることを本来の目的とする、地方交付税が近年大幅に削減されてきました。

 昨今の大都市圏と地方の財政力格差の拡大は、この二つの大きな要因があると考えております。

 財政力格差の是正を図るためには、何よりも、地方交付税の総額が確保され、その本来の機能が十分発揮されることが、重要であります。

 加えて、税収の偏在が著しい現状を踏まえると、さらに進んで税財政制度の根幹に踏み込むような改革も必要であり、「ふるさと納税制度」、「地方法人課税の見直し」など、財政力格差の是正に向けた、様々な角度からの議論の高まりは、大いに歓迎すべきであると考えております。

 今後、地方税・地方交付税を含めた一般財源ベースで地域間の格差が拡大しないような方策について、同様な財政状況にある県等とも連携を図りながら、国に対して、積極的に働きかけていく所存であります。



(問)財政改革に係る知事自身の具体的改革の方向性について伺う。

(問)改革推進会議の設置の狙いと県政運営にどう活かしていこうと考えているのか伺う。

(答)次に、財政健全化のための具体的改革の方向性と、「改革推進会議」設置の狙い等についてであります。

 本県の財政は、現時点の見通しとしては、毎年二百億円台後半の赤字が相当期間続くと見込まれます。現状のままでは、早ければ、平成二十一年度には基金が枯渇するおそれがあるという極めて深刻な状況にあり、財政の健全化は待ったなしの課題であります。

 これまでも、悪化する財政状況に対応して、さまざまな厳しい措置がとられてきましたので、さらに歳出を削減しうる余地は狭まってきております。歳出予算を一般財源ベース(平成十九年度当初予算三千百七十九億円)でみると、人件費が約三分の一、公債費が約三分の一、残りの三分の一も義務的な経費が多くを占め、任意性の高い経費は一割強(三百八十億円程度)に過ぎないのが実情です。このため、二百億円を超える収支不足への対処は、極めて困難な問題であります。

 このため、今後は、聖域を設けずに、さらに厳しい事務事業の見直しや経費の抑制、歳入の確保といった改革を検討していく必要があると考えています。

 財政健全化に取り組むに当たっては、数字の羅列で抽象的で分かりにくい県の財政状況を県民の皆様にできるだけ分かりやすく説明し、御理解いただく必要があります。また、財政健全化は県民の生活に大きな影響を及ぼすものであり、県民の皆様の御意見をよくお聴きしながら対応していくことが大切です。こうした考えから、「改革推進会議」を設けたものであります。

 この会議は、県内各界の民間委員で構成され、先般第一回目の会合を開いたところです。今後、有識者や一般県民の方のご意見をお聴きする機会も作りながら、民間の立場から今後の県財政のあり方について十分ご議論いただき、財政の健全化方策についてご提言をいただくこととしております。

 そして、その提言を踏まえ、議会での十分な議論を経た上で、中長期的に持続可能で健全な財政運営を確保するための県としての基本方針を十月末までに決定したいと考えています。

  そして、平成二十年度以降の予算は、この健全化基本方針に基づいて編成することにより、財政の健全化を実現していく考えであります。



(問)総合発展計画について、地域開発型の計画策定が困難な状況下で、どのような特色や方向性を持った計画としようとしているのか伺う。

(答)次に、島根総合発展計画についてであります。

 島根には、豊かな自然、伝統的な文化、温もりのある人間関係、ゆとりある生活環境など、これからの成熟した社会の中で求められるものが、数多く残されています。

 また、地域の特色ある資源、高度な技術が支える独自の産業、さらには新たな産業の芽があります。

 これからの島根の発展を考えるとき、これらの優れた資源に磨きをかけ、国内外に積極的に打ち出していくことが必要であります。

 また、県内それぞれの地域には、独自の魅力にあふれた資源があります。県下一律の施策展開を図るだけでなく、それぞれの地域が持つ優れた価値と潜在能力を最大限に活かした地域づくりが必要です。

 新たに策定する計画においては、こうした島根の持つ強みを活かした産業発展や地域づくりの方向を示していきたいと考えています。

 なお、この計画は、中長期的な財政健全化方策との整合性を取りながら、今年度末までに策定することとしています。



(問) 各部の計画策定や施策の立案の際に、経済動向、人口動態など関係するデータの詳細な分析・予測を行うため、統計学や社会学に精通した専門家を活用する必要があると考えるが所見を伺う。

(答)次に、社会学などの専門家の活用についてであります。

 計画の策定や施策の立案には、詳細のデータ分析や的確な将来予測が不可欠である、との議員の御指摘は、私もそのとおりであると考えております。

 日本の未来像は、必ずしも明確に示されているわけではありませんが、島根の行く末を予測し、将来計画を立案して行くに当たっては、専門家の知見を十分活用して参りたいと考えています。



(問)先端産業と地域資源活用型産業のバランスのとれた振興について、所感を伺う。

(問)産業活性化戦略会議は何を対象に、どのような方向性を出そうとしているのか伺う。また、この会議における地域資源活用型産業の位置づけについて伺う。

(答)次に、産業振興についてお答え申しあげます。

まず、先端産業と地域資源活用型産業のバランスのとれた振興が必要であるとのご指摘は私も全く同感であります。

テキスト ボックス: (所管部   商 工 労 働 部)地域資源活用による産業起しにつきましては、これまでも、地域ビジネスやツーリズムの振興あるいは県産品の販路拡大、観光振興、健康食品産業群の育成などの面で取り組んでおりますが、今回の補正予算案に計上している地域資源産業活性化基金を活用し、各経済団体と一緒になりましって、地域固有の資源を活かした企業化、あるいはや産業群の育成に取り組んで参りたいと考えております。

 さらに先進の技術と農林水産物等の地域資源を結び付け、より付加価値が高く、市場において評価される製品、たとえば、江津市桜江町の桑の葉を利用した商品など、そういうものをつくり出していくことも大事なことだと考えております。

次に、産業活性化戦略会議についてお答え申しあげます。

 会議では、先端産業や地域資源活用型産業の両方で、県産業を活性化するために、民間企業経営者などから実戦的な知恵と経験、ノウハウなどをご教授いただき、それを参考にして私どもが具体的な産業振興を行っていく、これが大きな目的でございます。

十月末までには、当面すすめるべき具体的な戦略を中心に最初のとりまとめをしたいと考えているところでございます。そうすることによりまして、産業振興をさらに効果的に進めたいと考えているところであります。


(問)これまでの新産業育成等の産業振興への取組をどう見ているのか伺う。また、今後の産業振興の考え方や取組手法はどう変わっていくのか伺う。

(答)次に、産業振興の取組みについてであります。

 産業競争力強化プロジェクト、や新産業創出プロジェクト、企業誘致などの取組みは、これまでも精力的に行われてきております。たとえば、新産業創出プロジェクトにおきましては開発したプラズマ利用技術によって、県内企業が製品の付加価値の増加につなげていくなどといった一定の成果を上げつつあります。他方、技術開発は進みましたが、実用化・企業化にはなかなか結びついていないものもあります。

 産業振興には、息の長い取組みが必要でありますが、今後、「産業活性化戦略会議」などの場で県内外の有識者から、戦略や手法等につきましての御意見をいただきながら、より効果的な産業振興を行っていきたいと考えておるところであります。

 さらに、これまでの取組みに加えまして、本県が有する豊かな自然と住みやすい生活環境を活かし、情報サービス産業を振興することが必要ではないかと考えております。

 IT人材の育成・確保を重点として施策の充実を図り、大都市から島根への仕事の流れをつくるとともに、情報サービス関連企業の集積を図っていく努力を行ってまいります。

 また、既に県外から出てきて、この地に来られて、長くこの地で操業している企業などでは、事業拡大のために雇用を増やす動きが近年みられます。こうした動きをさらに加速していくことも検討してまいります。



(問)ふるさとへ帰りたい、定住したい若者に対して、手を差し延べ、救うことこそ、まさに行政の役割と考えるが、所見を伺う。

(答)次に、ふるさとに定住したい若者への支援についてお答えいたします。

 議員御指摘のとおり、若者の定住は、活力ある島根を築いていく上で、大事な行政課題であります。

 隠岐をはじめ県内各地で、島根の良さを生かした農林水産業や工芸などを都会の若者などに体験させる取組みなどにより、数多くの若者定住の例を見ているところであおります。

   産業体験事業や無料職業紹介事業などにより若者のUIターン対策を積極的に取り組んでまいります。

 また、若者の県内定着を促進するためには、雇用のミスマッチの解消や職業意識の啓発なども重要であります。職業相談から情報提供、職業紹介までの一貫した支援や、県内外での就職面接会等を実施している「ジョブカフェしまね」のさらなる機能強化や利便性向上を図っていく必要があります。

 県内企業のなかには事業の拡張により新たな雇用も生まれてきているところは先ほど申したとおりですが、一方で、県外求人の増加等により、人材が十分に確保できないといった状況もでてきております。産業人材の確保・育成が緊急の課題となってきております。

 これは、見方を変えれば、ふるさとに帰りたい人にとっては、大きなチャンスでもあり、若者の県内就職に結びつけていかねばならないと考えております。

 こうした課題に効果的に対応するため、先般、「雇用対策推進会議」を設置いたしました。県内企業や経済団体、教育機関、市町村などから様々な御意見や御提言をいただき、総力をあげて取り組んでいく考えであります。



(問)「しまね食と農の県民条例」に基づく取組を今後どのように進めて行くのか伺う。

(答)次に、「しまね食と農の県民条例」と農業振興についてであります。

 農業・農村は、食料供給面だけではなく、県土や自然環境の保全、安らぎを醸し出す景観形成など、多面的機能で広く県民生活に関わりを持っています。

 この条例は、こうした農業・農村の役割を明確にした上で、農業関係者、県民や県などにも必要な行動と理解を求めております。            

 私は、この条例の基本理念を踏まえ、県民や農業関係者、行政の連携協力の下に、地産地消や食育の推進、地域の実情に即した担い手の育成、消費者ニーズに合った安全・安心な農畜産物の安定的な生産、供給体制の強化など、農業者一人ひとりが、希望と誇りを持って取り組める農業の確立に努めてまいります。

 また、条例では、施策を総合的かつ計画的に実施するため、基本計画を定めることになっておりますが、関係者や県民の意見を聴きながら、今年度中に策定することにしております。

計画の策定にあたって、食料の安定的な生産供給や自然環境の保全、中山間地域の振興などについては、農業のみならず、林業、水産業にも共通する課題であり、農林水産各分野を包括して取りまとめる考えであります。


(問)単なる量の拡大を目指すのではなく、一級品の地域資源を理解していただける方を対象にした、質の高い本県ならではの特色ある観光振興を行うべきと考えるが、所見を伺う。

(問)地元自らが県内の関係者と連携を図り、県内旅行を企画しPRするような取組が行われるよう支援することが必要と考えるが、所見を伺う。

(答)次に、観光振興について申し上げます。

 昨今の観光産業における価格競争の厳しさにつきましては、私も関係業界などから話をお聞きしております。大手旅行会社の商品の多くが「安さ」を求める消費者のニーズに対応して、低価格商品へ移行しつつあることがその背後にあるように思います。

 一方、通り一遍の旅行に飽きたらず個性のある質の高い旅を求めるニーズも拡大しており、地域の歴史や文化等のテーマを重視した商品の需要も根強くああると思います。

 こうした動きを踏まえ、単なる量の拡大ではなく、一人当たり観光消費額の拡大、観光産業の適正な収益の確保、旅行者の満足度向上というような、質の面にも配慮した観光振興を進めることが大事だと考えております。

 このため、観光地が自ら新たな観光プログラムを作成するなどの動きを加速する支援策として、「観光交流ビジネス支援事業」を今年度から二ヶ年間実施することといたしております。今回の補正予算にも所要の経費をいるところでございます。


(問)県内の高速道路、住民の生活を支え地域間を繋ぐ地方道路について、本県の実状、整備の必要性と果たす役割について伺う。

また、今後の道路整備の更なる進捗について伺う。

(答)次に、県内の高速道路と地方道路の実状、整備の必要性と果たす役割についてであります。

 本県の高速道路は、有料道路や国道バイパスなどあらゆる手法を活用して整備を進めており、現在、その供用率は五十パーセントに達しております。また、国県道の整備については、平成二年度に「二十一世紀に向けた県単独特別道路整備事業」を創設するなど、重点的な整備を進めてきた結果、平成十八年度末の改良率は六十一パーセントまで進捗しております。

 澄田前知事は、遅れている本県の道路整備に全力を傾注されてきたと認識いたしております。

 しかしながら、高速道路、国県道とも全国平均からは、ほぼ二十年遅れているのが現状であり、未だ道半ばであります。

高速道路が既に開通している中海・宍道湖圏域では、製造業を中心に産業集積が進んでおります。また、中山間地域におきましても、例えば、中国縦貫道沿線の吉賀町では、県外企業が進出し、現在、工場の増設も計画されております。一方、高速道路がつながっていない地域の企業は、その早期整備を強く望んでおり、一日も早く完成させることが重要であります。

 また、災害に強い安全・安心な道路ネットワークの確保や、交通弱者のための歩道設置など、生活道路の整備が、まだまだ必要であると考えております。

 次に、今後の道路整備の更なる進捗についてであります。今後の整備促進には、その財源となる道路特定財源の確保が不可欠であります。今年度は、制度の具体的な見直し策が決定される重要な年であり、地方の道路整備に必要な財源が確実に確保されるよう、自ら先頭に立ち国へ働きかけてまいります。特に山陰道と尾道松江線については、今年作成される「道路整備の中期計画」に明確に位置付けられるよう、積極的な取り組みを行ってまいります。

 また、国県道については、より一層の選択と集中により、効果的・効率的な整備を進めていきたいと考えております。                   



(問)新たな過疎対策立法に向けて、知事の意気込みや今後の取組方針について伺う。

(答)次に、ポスト過疎法に向けた今後の取組方針についてであります。

  現行の過疎地域自立促進特別措置法は、平成二十一年度末に失効いたします。議員御指摘のとおり、引き続き過疎対策は必要であります。

 近年、全国的に少子高齢化と人口減少が進み、特に中山間地域におきましては限界集落問題や医療・交通・産業振興など新たに対応すべき課題が多く生じています。従いまして、従来の基盤整備の施策のほか、ソフト施策の充実も幅広く含めまして検討することが必要であります。さらに市町村合併により市町村の一部区域が過疎地域である団体が増加しております。この取扱をどうすべきかも問題であります。

 このため、早急に、新法制定に向けた全国的な動きをつくっていく必要があります。

 私は、このような認識のもと、先月二十一日岡山市で開催された中国地方知事会において、新たな法律制定の必要性を主張するとともに、国家的な視点からの検討が必要との考え方から「全国知事会への検討組織の設置」について提案を行ったところです。

  その結果、今後中国五県が共同いたしまして活動することで賛同が得られ、速やかに全国知事会において、この提案を行うこととしています。

 また、先月末には、国及び県選出国会議員の方々に対して重点要望活動を行い、理解と協力を求めたところであります。 

 今後県議会をはじめ関係団体と一致団結いたしまして、私自身先頭に立ってあらゆる機会をとらえて働きかけを行ってまいります。


(問)中山間地域や離島など地域医療の確保に関する考えを伺う。併せて、今後の医師及び看護師など医療を担う人材の確保の取組について伺う。

(答)次に、医療の提供体制についてであります。

   近年の医師不足により、特に離島や中山間地域では、医療を取り巻く状況が厳しさを増しております。

 この意味で、地域医療の確保は極めて重要でありまして、県政の最重要課題の一つであります。

 この地域医療を確保していくためには、医師の確保、医療機関相互の役割分担・連携を進める。こういったことが必要であります。

 医師の確保にあたりましては、「即戦力となる医師の確保」と、中長期的な観点に立った「大学と連携した医師の養成」、この両面から取り組む必要があります。

 これまで、赤ひげバンクなど様々なチャネルを活用し、県外在住の医師に対するU・Iターンの促進により、県内医療機関の勤務医の確保に取り組んでまいりました。また、島根大学の地域枠の推薦入学制度と連携した奨学制度などにより、将来、地域医療に携わる医師の確保に取り組んでおります。

 しかしながら、医師の確保対策はこの島根の地域だけに関わる問題ではございません。各地で同じような問題に直面をしているわけであります。私は、先般、国の関係省庁に対して、実効性のある対策を国として作っていく必要があることにつきまして強く要望したところです。さらに、島根県におきましては島根大学学長をはじめ医学部の関係者に対しましても、地域医療を支える医師派遣などにつきまして、一層配慮していただくよう具体的に申し入れを行う考えであります。

 また、看護職員につきましても、その確保が例年よりも厳しくなっています。看護学生の県内就業の促進や離職の防止など看護職員の確保対策に取り組んでいく必要があると考えております。

 県といたしましても、看護学生修学資金の拡充や県立石見高等看護学院での地域推薦入学制度の導入など、さらなる対策を講じることとしております。


(問)本県のがん対策の取り組みについての所感を伺う。また、がん基金の充実に向けて、知事自ら県民や県外の県人会への呼びかけ、人脈の活用など積極的な取組をお願いしたいが、所見を伺う。

(答)次に、「がん対策」及び「がん基金」についてお答え申し上げます。

 がんは島根県における死因の第一位となっておりまして、総合的ながん対策を講じることは極めて重要であります。できることから速やかに取り組むことが大切であると考えております。

 特に、本県におきましては、がん患者や家族・遺族の方々が集う「がんサロン」が既に十三ヵ所で開設されるなど、先駆的な活動が行われています。こうした中、昨年九月には議員提案により、全国初の「がん対策推進条例」が制定されました。全国にも誇れるものであると、私、考えておるところであります。

 このたび、この条例に呼応いたしまして、島根難病研究所において、「がん基金」が設けられ、県民あげた募金活動に取り組まれるというお話しががございました。誠に意義深いことであると考えております。

 私は、「がんの予防」「医療水準の向上」「患者支援」の三本を柱とした島根県のがん対策を推進するとともに、「がん基金」をはじめとした関係団体の活動につきましても、関係の皆様と一緒になりまして積極的に取り組み、一日も早いがん医療の向上を願うがん患者や家族の方々の切なる声に応えてまいりたいと考えているところでございます。


(問)この度の不適切事案を踏まえての島根原子力発電所の安全対策とプルサーマル計画について伺う。

(答)次に、原子力安全対策についてであります。

 原子力発電所につきましては発電所周辺地域住民の信頼が得られるような安全確保の体制が必要不可欠であります。

 この観点から、この度、島根原子力発電所で不適切事案があったことは、誠に遺憾であります。

 県としては、中国電力に対し、国の指導の下に定めた再発防止のための行動計画の確実な実施により、地域住民の信頼を回復するよう強く申し入れております。今後、県としては、この行動計画の実施状況をよく確認していく考えであります。また、中国電力と締結している安全協定を今後とも厳正に運用し、地域住民の安全確保に万全を期してまいります。

 次に、プルサーマル計画につきましては、様々な角度から慎重に検討を重ねた結果、中国電力からの事前了解願いに対し、基本的に了解するとの回答を、昨年十月に行ったところです。

 事前了解願いに対する最終的な回答は、国の安全審査結果を確認した上で行うこととしております。

 先ほど申し上げたとおり、原子力発電所については、周辺地域住民の信頼が得られるような安全確保の体制が不可欠であり、中国電力の行動計画の実施状況をよく確認した上で、事前了解願いに対する最終的な回答を行いたいと考えております。


(問)県内の教育の現状をどのように認識しているのか伺う。また、総合的な教育力の向上に向けての考えを伺う。

(答)次に、県内教育の現状と総合的な教育力の向上についてであります。

 近年、子どもたちの学力、体力、規範意識の低下、生活習慣の乱れ、コミュニケーション能力の不足、過度なテレビやゲームの時間による発達への影響などが危惧される状況にあります。

 こうした問題の解決に当たりましては、個々の課題に適切に対応するとともに、総合的な対策が必要だと考えております。

 学力につきましては、本年度は、国の学力調査が実施されました。昨年度に引き続き、県におきましては県単独の学力調査も実施いたしました。この結果を基に、県内全ての学校をあげて子ども一人一人へのきめ細かな指導や、教師の指導力の向上を中心とした学力向上プロジェクトを推進しているところであります。

 体力の向上や生活習慣の改善のためには、新しく教育庁内に設置いたしました「健康づくり推進室」を中心に、学校、家庭、地域が一体となりまして県民運動として展開をしていきます。

 また、地域の教育力を支える大人たちの地域活動への参画を一層促すために、公民館やNPO法人等の協力を得ながら、地域の教育をする力を高める取組を進めてまいります。



(問)本県の教育ビジョンについて、大学進学を目的とした競争型教育システムとは異なるものであるが、一方で学力重視の現実社会を考えた時の所感を伺う。

(答)次に、ふるさと教育と学力重視の現実社会に対応した教育について申し上げます。

 現在、島根県で実施しておりますふるさと教育は、第一にはふるさとへの愛着をもつ子どもを育てること、第二には「他人をやさしく思いやる心」、「美しいもの、気高いものに感動する心」など、豊かな人間性や社会性を備えた子どもを育てること、第三には体験的な学習等を通して、学ぶ意欲を高め、自ら考える子どもを育てることをめざしたものであります。

 県内の学校では、総合的な学習の時間等を中心にいたしまして、地域の方の協力を得ながら、創意工夫を凝らし、子どもたちが生き生きと活動する取組を行っております。二年目であります昨年は成果の手応えを実感できたとの報告を現場から受けているところであります。

 一方、大学の受験競争といった厳しい現実ございます。このため子ども達の学力を育てる現実的な対応も必要であります。実際に、各高等学校におきましては、できる限り生徒の力を高めるための努力が懸命に行われております。

 ふるさと教育と学力重視の現実社会に対応した教育は、一見相反するように見えますが、人格形成期における多感な時期に、ふるさと教育がねらいとする、豊かな人間性や社会性を備えた子どもをはぐくみ、その上に社会人として求められる知識・学力や受験のための競争する力を身に付けさせることが、県の教育にとって必要であると考えておるところであります。



(問)県内の高等学校の在り方及び専門高校と県内産業の結びつきについて伺う。

(答)次に、専門高校と県内産業の結びつきについてであります。

  本県の高校新卒者の県内就職者数は、生徒数の減少もあり、この五年間で約千百人から約七百人に、就職者全体に占める割合では約七割から約六割に減少しております。

 このうち、専門高校は約八百人から約五百人に減少しております。

 産業を振興し、若者が活き活きと働ける場を増やしていくことは、私が県政の最重要課題として掲げた「活力ある島根を築いていく」上で最も重要なものの一つであります。

 誘致企業の事業拡大などにより、今後三か年で新たに約二千人近い雇用が見込まれておりますが、こうした需要に、県内の専門高校の生徒や、都市部からの有能な技術者のU・Iターンなどにより対応し、若者の県内定住に努めて参りたいと考えております。

 一方、専門高校の生徒の多くは、学んだ専門知識が活かせる職場、国家資格や技術・技能を活かせる職場を希望しておりますが、必ずしも県内ではそのような希望を十分に満たせない状況にあります。

(希望の業種や職種を求めて経済活動の活発な県外へ就職する生徒が増加する傾向にあります。)

 そこで、こうした高校生の希望に対する企業の理解を促進したり、企業が必要とする産業人材の育成等に対応するため、「雇用対策推進会議」を設置したところであります。

 今後、この会議などを通じて、産・官・学が一体となった取り組みを進め、専門高校と産業界の連携により雇用の場の確保や高校卒業者の県内就職の促進に取り組んで参ります。



(問)現段階での世界遺産登録への見込みと残された期間の取組について伺う  

            

(答)最後に、石見銀山の世界遺産登録についてであります。

 ユネスコの諮問機関でありますイコモスが行った登録延期という勧告は、私どもも意外であり、誠に残念なことでございました。イコモスの石見銀山の価値の証明につきましての質問は、いくつかありますが、例えばこのようなことが指摘されているわけであります。

@「石見銀山の遺跡が、どのように人類の価値の重要な 交流を表してきたのかを証明する詳細な物証が示さ れていない」のではないか、あるいは、

A「アジア地域にある日本以外の他の鉱山遺跡との比較研究に関する情報が不十分」ではないか、

といったような指摘があったわけでございます。

 こうした指摘に対しまして、文化庁、外務省、大田市とともに専門的見地からの補足情報の取りまとめを行い、次のような反論のための見解も既にまとめているところであります。例えば、

@「東西文化交流への貢献は、朝鮮の歴史書、ヨーロ ッパ人の日本銀に関する記録、ポルトガル作成の地 図等から明白」になっている。あるいは、

A「アジアの鉱山に関しましては追加調査を行い、結果は 既に提出してあるはずである。その後の調査でもアジア地域には比較検討できる鉱山遺跡は存在しない」

という、こんなような見解をまとめ、これを踏まえまして、我が国から公式に「事実誤認を指摘する文書」を世界遺産委員会の議長宛に提出しておるわけでございます。今週末に開催される世界遺産委員会、ユネスコの近藤大使が出席されるわけでありますが、近藤大使には先日現地を視察いただくとともに、パリに帰りまして、世界遺産委員会構成国等の理解を求めるなど積極的な外交活動が展開されているわけでございます。

 さらに、ニュージーランドで開かれます今週末からの世界遺産委員会に関しましては、県の職員を派遣いたしまして、文化庁、外務省、大田市一体となりまして、近藤大使を中心とした外交活動に、できる限りの貢献、協力を行うこととしておるところであります。

 石見銀山遺跡の世界遺産としての価値は、揺るぎないものでありまして、私は、近藤大使の活動などにより、登録の可能性は相当あるものだと考えているところでございます。

 今後も引き続き登録に向けまして、全力を挙げて参りたいと考えております。(趣旨)



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