げんげの葉のうた

花はつまれて
どこへゆく

ここには青い空があり
うたうひばりがあるけれど

あのたのしげな旅びとの
風のゆくてが
おもわれる

花のつけ根をさぐってる
あのあいらしい手のなかに
わたしをつむ手は
ないかしら
金子みすヾ童謡集「わたしと小鳥とすずと」JULA出版局より。
その日の朝は天気もよく、いつものように賑やかで慌しい一日が始まる。
子どもたちが学校へ出掛けていく時間が迫ると、忘れ物がないか点検に忙しい。
長男は手際よく、次男は私の手助けを当てにしながら、出掛ける準備が整った。
「いってきまーす」と元気のいい声。
いつもなら「いってらっしゃい」と玄関先で見送るのだけど
この日は犬の散歩のついでに、途中まで通学路をついて歩くことにした。
道路の両脇には田んぼが広がっていて、子どもたちは蛙や虫が気になって絶えず中を覗いている。
私もつられてあぜ道の草むらに目を凝らす。
すると、こんもりと茂ったシロツメクサが目に入った。

『子どもの頃、シロツメクサの花でいっぱい王冠を作ったっけ』

子どもの頃の思い出が不意に蘇る。
さすがに道路脇で王冠が作れるほどの花は無かったけど、偶然四葉のクローバーを見つけた。
一本が見つかると、すぐ横にもう一本、さらにその横に一本と、あっという間に3本も見つかった。
すぐに人のものを欲しがる次男が「ちょうだい」と言った。
3年生の長男は「そんなのすぐ見つかるし」と言って澄ました振りをした。
私は何度もせがむ次男に3本とも手渡してしまった。
学校へ行けば、次男が四葉のクローバーを友だちとか先生に手渡してる様子を、安易に想像できたし
微笑ましく思えてきたから。

そのあと暫く長男の後姿を見ながら歩いていたけど
曲がり角に差し掛かり「じゃぁね、いってらっしゃい」と子どもたちと別れた。
その後、私はずっと長男のことが気に掛かって仕方がない。

帰り道に運良くもう一本四葉のクローバーを見つけることが出来た。
急いで家に帰って、長男の算数の教科書に挟んでおいた。
明日学校で見つけてくれるだろうか?


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